Hideのおすすめ本とエッセイと絵と詩などのブログ

おすすめ本の紹介文やエッセイ、絵、人物画、現代詩などを載せていきたいと思っています。

「樹影譚」丸谷才一 文春文庫

丸谷才一は先年亡くなりましたが、現代小説家として、通好みの小説ファンが多かった人です。「小説家としては学問があり過ぎ、学者としては想像力があり過ぎる」と言われたほど博識な小説家でした。この小説はまだ女を知らない青年と可憐な生娘との初体験がテーマです。うぶ同士の若い男女の交渉はよく書かれていて、微笑ましくすら感じられます。フレッシュな性愛を描いた小説です。

Hideの俳句・短歌 4

夏座敷縁側降りる猫の子や耳をそばだて秋の音をきく


夜の秋窓より風のまたぎ来る


月天心とんがりおりぬピラミッド


ランボーという男あり秋の夜


くったりと女ねむるやキリギリス


しばらくは月を見ていし無人駅


永遠という観念の秋は深み


Hideの俳句・短歌 3

日なた日陰小春日和の散歩道


眺め入る空には秋や信号待ち


部屋を出でずこころ散らかる日曜日 <無季>


寒風にひとり吹かれて帰り道


雷鳴やひとり過ごせる部屋に風


レクイエム聴くよしもがなかの日にはモーツァルトは死にたりければ


聴くも良し聞かずともよしレクイエムモーツァルトは生きたりければ

エッセイ 病院というところ

ルソーの「エミール」にはこんなことが書かれている。「病院は病気を治すところではなく、病気をつくるところである」と。


現代医学の発達は目覚ましいから、現代では一概に、このルソーの言葉通りという訳にはいかないかもしれないが、未だに、ある真理を内包している言葉である。


わたしと同じくらいの年代の人は、およそ必ずと言っていいほど、歯に銀歯か金歯が一本以上あるはずである。これは学校指定保険医の名目でやって来た歯医者が、放って置けば、唾液に含まれるカルシュウム成分のおかげで、再生するはずの歯を少し虫歯になったという理由で、削って余計なことをしたからである。今の子は、銀歯や金歯をしている子はほとんどいない。


ただ、当時の医学会では、歯は少しでも虫歯になったら、再生しないというのが常識だった。かくの如く、医学の常識、特に絶対といわれている常識は、ほとんど疑ってかかってもいいとわたしは思っている。


早期発見早期治療という現在の医学界では、まったくの常識になってしまっていることも、疑ってみて差し支えないと思っている。


わたしの母は一時期リュウマチを病み、歩けないほどの症状だったが、母は、病院の嫌いな慎重な性格の人で、自分で立って歩けるようになってから、ようやく病院に行った。医師からは、「ああ、リュウマチが治りかけていますね」と言われたものである。もし、早期に病院にかかっていたら、自己免疫力が正常に働かず、重いリュウマチの症状になって今でも苦しんでいたことは、容易に察せられる。現在の母は、リュウマチなどどこ吹く風である。


現今、乳がん患者が増加しているそうだが、乳がんとなる原因物質の摂取が増えたわけではない。乳がんの検診率が増えたのである。あの小林麻央さんが、検診オタクと言ってよいほど、よく病院に行って、隅から隅まで調べてもらっていたことをかんがえてほしい。


「病は気から」という言葉は、決して古めかしい、今となっては、間違いと思われているような言葉ではない。


そして、病院には、医師としての権威を振りかざし、患者を却って、態々、傷めつけるような医師がいるものである。わたしも、そういう医師としての権威を振りかざす医者に出会ったことがある。もう二度と行きはしないが。名の通ったような大病院に、何故、VIPと呼ばれるような人は近づかずに、他の病院を選ぶのかよく考えてもらいたいところである。


ルソーは、至極まともなことを言ったまでなのである。

「地下室の手記」ドストエフスキー 新潮文庫

小型爆弾と言ってよい本です。「罪と罰」の直前に書かれました。ドストエフスキーは人物としてはとても意地が悪く、付き合う人々を困らせずにはいない厄介な人である上に、至極純良な心を持っているというじつに複雑な心の持ち主でした。「ぼくは病んだ人間だ。意地の悪い人間だ。」という出だしで始まるこの小説は、そのドストエフスキーの露悪的な面が存分に発揮されたロシア風の私小説と言っていいものです。ニーチェはこの小説を、人生の中で出会ったもっとも衝撃的な本の一つとして挙げています。強烈な毒を持った本です。