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「法華経」坂本幸男・岩本裕訳注 岩波文庫

仏教経典万巻中第一の書、諸経の王と称される「法華経」です。インドは時間観念を重要視しないお国柄です。そのため、仏教経典もその経典がいつ成立したのか分からないことが多く、また、どれがもっとも重要な教典かの判別もしません。そのために、仏教が中国に渡った際、天台智顗<ちぎ>が教典判釈<きょうてんはんじゃく>を行い、この法華経を仏教経典の最後に成立したものとし、その最高位に据えました。法華経には、「意向」に描かれた、五十年裕福な父から離れて暮らし、父の意向で父の家で便所のくみ取りの仕事をし続ける心の立派な「貧しい男」の話。また、「常不軽菩薩品」「<じょうふきょうぼさつぼん>」に描かれた、どのような人も軽蔑しない、あなたは修行をすれば、未来の仏になる人だからだと人々に言うために、却って、人々から迫害される「常不軽菩薩」の話など、真に忘れがたい話があります。仏教研究者によりますと、これらの話の思想には、西洋思想との接点が見られるということです。「貧しい男」の自我意識の芽生え、また、「常不軽菩薩」の迫害という思想はキリスト教には必須のものです。日本には、日蓮上人を筆頭に、この書物に不抜の信仰をあらわした偉人が多くいます。聖徳太子も道元禅師も法華信者でした。仏典の文章は、じつに大らかな円満具足したもので、本当に平安な心から語り出されたものだと強く感じられるものです。偉大な教えと知恵に溢れたコスミックな大きさを持つ唯一無二の書物です。