Hideのおすすめ本とエッセイと絵と詩などのブログ

おすすめ本の紹介文やエッセイ、絵、人物画、現代詩などを載せていきたいと思っています。

「ロミオとジュリエット」シェイクスピア 新潮文庫

シェイクスピアの作品の登場人物の中では、年齢が特定されている人物は数名ほどですが、ジュリエットはその中でもはっきりと十四才とされています。これは真剣な恋愛をするのには十四才で十分だということを物語っているようです。この「ロミオとジュリエット」は、悲劇と喜劇との境を紙一重の差で行き来するように見えます。結局些細なすれ違によるミスから悲劇となって終わりますが、もし、あのときああだったらと、悔恨にも似た情を催さずには、観ることのできない恋愛悲劇と言っていいでしょう。


「ジュリアス・シーザー」シェイクスピア 新潮文庫

シェイクスピアのギリシア政治劇です。「ブルータスお前もか。」の名台詞が見えます。シェイクスピアの中ではもっとも男らしい剛毅果断な悲劇と言っていいでしょう。作中「あの男はおそろしい、何を考えているか分からぬ。あの男は痩せているからだ。」という文句は、後世の心理学者クレッチマーを刺激して、今でも人々によく知られている体型心理学の基礎を作り出しました。ギリシア政治家たちの話し振りや立ち居振る舞いまで、彷彿とさせる政治劇の傑作です。

「真夏の夜の夢」シェイクスピア 新潮文庫

シェイクスピアの作品にはおよそ必ずと言っていいほど原作となる種本があるのですが、この劇には筋となる種本がないそうです。まさしく真夏の夜に見る夢のような筋書きのない劇が進行します。劇が終わった後には、じつにあざやかな夢から覚めたような気持ちにさせられます。シェイクスピアは詩人としてその経歴をスタートさせたと言われていますが、この劇はそのシェイクスピアの無垢な詩的才能が全面に溢れ出た雅やかな喜劇です。作中結婚式の場面をメンデルゾーンが「結婚行進曲」として作曲していることはよく知られています。

「お気に召すまま」シェイクスピア 新潮文庫

シェイクスピアの前期の喜劇です。シェイクスピアと言えば、ハムレットなどの四大悲劇を中心に考えますが、この見方は、実は、ロマン主義文学台頭の時代以降のもので、それ以前の時代のシェイクスピア観では、中期の四大悲劇よりも、前期の喜劇の方が、優れているとされていました。この「お気に召すまま」では、人間は自然とどう向き合うのかがテーマとなっています。主人公の貴族は、自分の棲み家を森の中と定め、配下の家来たちもそこで生活させます。自然と一体化するという大規模な実験なのですが、その試みが成功しそうになる劇の終わりがけに、ある賢い男に、この劇の主題そのものをそのまま引っくり返すような、簡潔で痛烈な皮肉を言わせて、劇を締め括ります。シェイクスピアの、ひいてはヨーロッパ人の自然観が如実にあらわされた傑作喜劇です。


「ぼくならこう考える」吉本隆明 講談社文庫

戦後思想を代表する著者が、晩年、若い人に向けて書いたエッセーです。いわゆる処世法と言っていいものですが、世にいう処世術とはひと味違います。吉本の長年に渡って、戦後思想に心を砕いてきた思想家としての裏付けがあるからでしょう。雅俗が奇妙に混交する著者の思想が、ようやく晩年になって、得心のいく表現法を見出した感があります。ここで、一人の人間が確かに自分のかんがえを、自分のことばで語っていると強く思わせるものがあります。いわゆる在野の知識人たちには、非常に人気のあった戦後思想家のひとりでした。