Hideのおすすめ本とエッセイと絵と詩などのブログ

おすすめ本やエッセイ、絵、現代詩などを載せていきたいと思っています。

「うひ山ぶみ」本居宣長 岩波文庫

宣長が、大著「古事記伝」を落成した年に書いた初学者のための手引き書です。宣長はここで、暇がないからといって、年を取っているからといって、また、才能がないからといって学問をしないのは、とても残念なことだ。学問は、暇がある人より、ない人の方が却って進むものだし、年を取っていても学問するのになんの差し支えもない。才不才は天賦のことで、そういうことを気に掛けてはいけないと実に懇切丁寧に説いていきます。そうして、学問で最もいけないのは、心が折れて学ぶことを放棄してしまうことだと強調します。この書は、学問の方法について書かれた本ではありません。宣長は、学問の方法というものについてはとても懐疑的な人でした。


「檸檬 <れもん>」梶井基次郎 新潮文庫

梶井は宮沢賢治と比肩する童話的感性の持ち主だったと言っていいのですが、イマージュの鋭角的な強烈さでは賢治を上回っているように見えます。そうして、それが円満な童話的世界を破る裂け目となります。レモンの鮮烈な味と引き締まった造形美に爆発を見、美しい桜の木の下には動物たちの屍体が埋まっているのだと見る幻視力には、童話に安住することの難しい、都会的で苛立たしい、神経的に性急な血のさわぎが感じられるようです。それが、現実がそのまま童話的世界となる梶井独特の作品となります。梶井は賢治と同じ肺結核で、若年で世を去りました。


※ネットが故障してしまい、長らくUPできませんでした。どうぞ、ご寛容ください。


「中国古典選 ー易ー」本田済 朝日選書

中国の儒教教典五経の筆頭に位置する古典です。中国は不思議なお国柄と言っていいでしょう。「易」は占いの書物ですが、それを聖典として、しかも五経の最初に掲げているのですから。孔子は五十歳になって、はじめて「易」の本当の価値が分かり、これから人生の危機を回避することができるようになるだろうと言っています。おもしろいことに、コペルニクス的転回で有名な西洋の科学者コペルニクスもやはり五十歳で占いを用い、孔子と同じようなことができるようになったと言っています。コペルニクスの方は西洋占星術ですが。ユング心理学も「易」を重要な書物として取り上げます。ただ、この書物を読みこなすためには相当な年季が必要なようです。


「パルムの僧院」スタンダール 新潮文庫&【お詫び】

※ブログだけは更新していますが、忙しくて、なかなか、みなさんのブログを訪問できな  いでいます。どうぞ、ご容赦のほどを。<(_ _)>


当時、見掛けだけ大げさでロマンチックな小説が持てはやされていましたが、スタンダールはそうした小説を憎み、一見平板にさえ見えるような文章を用い、本当のロマンチシズム溢れる小説を書くことに成功しました。スタンダールは、この小説を自分の膝に親類の少女を座らせて、その少女に語るように口述筆記をさせて書いたと伝えられています。この「パルムの僧院」から感じられるロマンチシズムの香気は、非常に質の高いもので、「赤と黒」より洗練されていると言っていいでしょう。語り進めるうちに、あまりにも膨大な小説になることに畏れを抱いた出版社は、スタンダールに短くして欲しいと頼みました。しかし却って、そのために小説は象徴的な雰囲気が濃厚に漂う非常な傑作となりました。


「恋愛論」スタンダール 新潮文庫

スタンダールは時代を越えてはじめて、その本当の価値が分かると言われるほどの普遍精神の持ち主でした。ただ、フランス人は非常に計算好きな国民性を持っていて、スタンダールもこの恋愛論の中で、恋愛を様々なタイプに分析、分類し、これ以外の恋愛というものは有り得ないということを言っています。有り得ないかどうかはともかく、国民性の為せる業のように思えます。スタンダールは、恋愛を大きくウェルテル的な恋愛とドン・ジョヴァンニ的な恋愛とに分け、ウェルテル的な恋愛の方が幸福が大きいだろうと言っています。「孤独の中ではあらゆるものが手に入る、ただ性格を除いては。」というような秀抜な箴言も見られます。卓越した恋愛論です。