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「城の崎にて」志賀直哉 新潮文庫

晩年の志賀は、老練な剣豪のような風貌をしていました。志賀は、日本語から大理石像のような不動の文章をきり出すことに成功しました。ニュアンスが豊富なために、平易な言語で、正確な文章を書くことの難しい日本語の性質と、長年の間、格闘したことのあらわれなのでしょう。その日本語をあくまで生かしきりながら、簡にして要を得た確固たる造形品とするために、絶妙な言語感覚が磨かれることになりました。肉体のリズムがそのまま品格ある文章として定着しています。この作品では、死生観が清浄な抒情をともなって浮き彫りにされ、登場する死に面した三匹の生物たちはみな人間の魂を持っているようです。近代日本文学の傑作です。