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「ゴッホの手紙」ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 岩波文庫

ゴッホは画家ですが、弟のテオや友人に宛てて、非常に多くの手紙を残していたことはあまり知られていません。しかも、その多くの手紙は、ゴッホの多くの絵と同じくらいの、またそれ以上の文学的な価値を持ったものだとなると驚きを増す人は多いことでしょう。ゴッホの絵が、誰の真似も追従も不可能な、断固たる芸術的な価値を持ったものであることは論をまちません。ゴッホの生涯は自殺で終わりましたが、勘違いされて思われているように、決して狂死ではないのです。ゴッホの手紙には、少しも狂ったところはありません。むしろ、並外れて理性の筋金が通っていると言っていいくらいです。ただ、そこには何か独特なとしか言いようがない、ただならない調子を感じさせるのも事実です。ゴッホはその芸術においてと同じように、非常に個性的な精神病者でした。統合失調症者であり、てんかん病者でもあり、双極性障害患者でもあるという不思議な病態を示しています。中には、あれほどの創作力を持っていたのだから、病気ではなかったという専門家もいるくらいです。「私は素直に自分に振られた狂人の役を演じよう。」とゴッホは、手紙の中で言っています。絵を言葉で表現するとき、ゴッホのように見事に書き表せた人は他に見当たりません。自己超克という徳をこれほど我が物にした人物は他にいないでしょう。絵は手紙を超え、手紙は絵を超え、ゴッホが描いた糸杉のように果てしなく互いを超えていくようです。われわれは驚くほど純粋な精神の劇に立ち会うことができます。芸術に少しでも興味を抱くような人なら、読んでもらいたい感動の書物です。