Hideのおすすめ本とエッセイと絵と詩などのブログ

おすすめ本やエッセイ、絵、自作詩などを載せていきたいと思っています。

「谷間の百合」バルザック 新潮文庫

バルザックは51才で亡くなりましたが、創作意欲は実に逞しく膨大な量の小説を後世に残しました。この「谷間の百合」はそのバルザックの小説の中でも、「ゴリオ爺さん」と並んで、最高傑作と目されるものです。舞踏会で出会った美しいモルソフ伯爵夫人に恋をしてしまった純情な青年フェリックスは、夢がかない夫人とつきあうことができるようになりますが、その付き合いはごく折り目正しいストイックなものです。青年はその夫人との付き合いを何よりも替え難い喜びとして、日々を送りますが、あるとき、他の女性からの誘惑に負けて関係を持ってしまいます。遠からず夫人はそのことを知るのですが、そのとき、夫人はシェイクスピアのオフィーリアのような可憐な心情を吐露します。「谷間の百合」中、もっとも凄愴な美しさが際立つ場面です。近代リアリズム小説の中の白眉と言っていいでしょう。この小説も前置きが長い作品です。