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「『絶対』の探求」バルザック 岩波文庫

主人公のバルタザールは、科学の「絶対」に憑かれた男です。妻は足の悪い身体障害者ですが、夫のバルタザールのことを愛しきっています。バルタザールは時折、家族のことを顧みはしますが、科学の実験のために、家のほとんどの財産を蕩尽してしまいます。その間に妻は亡くなってしまいますが、見かねた娘がバルタザールに仕事を与え、家の経営を受け持ち、財政を回復させます。挿話に、この娘とある青年との純真な恋愛劇が進行します。それでも、「絶対」の探求を止めないバルタザールには、真理の探究に高潔ささえ帯びた上半分の顔と金が欲しくてならない下卑た下半分の顔という異様な人相が刻まれます。臨終の間際、意識の朦朧としたバルタザールは「見つけたぞ!」と叫んで息絶えます。科学の進歩のためには、こうした虚しい犠牲が不可欠であったことを思わせるような話柄になっています。失敗した真理探求者の偉大な一例です。