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おすすめ本の紹介文やエッセイ、絵、人物画、現代詩などを載せていきたいと思っています。

「五輪書」宮本武蔵 岩波文庫 

日本一の剣豪として知られる宮本武蔵が、その自分の剣術の腕前の拠って来たる所以を書き著したのが本書です。武蔵はここで、「仏法儒道の古語をも借らず」つまり、伝統の力を借りないで、書物を著そうと企てています。こうした試みは、まず無惨な失敗に終わることが通例ですが、武蔵の場合は、少なくともその独創的な思想のデッサンは鮮やかに成功した数少ない例の一つです。武蔵の思想に「器用」と「勝つ」の二つがあります。器用は、当時でも軽んじられた言葉で、器用にものはこなすがものの道理を知らぬというように使われた言葉です。武蔵が狙うのは、この卑しめられた「器用」という意味の解放です。自分が数々の対決で一度も遅れをとらなかったのは、自分の驚くべき腕の器用に拠る。少しも、ものの道理などに拠るものではない。もう一つ「勝つ」ということ、武蔵はここで独特な言い回しをします。「人を使う道に勝ち、絵筆を執る道に勝つ。」そうして、続けてこう言います。「人おのずから道の器用ありて、天理を離れざるのゆえか。」武蔵には、国宝となっている達磨の絵がありますが、自分の絵筆の器用が、剣の器用には及ばないと嘆いています。独創の書です。