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おすすめ本の紹介文やエッセイ、絵、人物画、現代詩などを載せていきたいと思っています。

「ワーニャ叔父さん」チェーホフ 新潮文庫

ロシアの近代作家チェーホフは医者でもありました。結核を患い44才で亡くなりましたが、その生涯は忍耐に忍耐を重ねた、聖職者のように清潔なものでした。作中のワーニャ叔父さんはどこにでもいるような、さしたる取り柄のない独身の中年男ですが、ある若い美しい夫人に恋をします。ワーニャ叔父さんは結局振られてしまうのですが、このツキから見放されたような男の心の苦しみには、平凡ですが、ある退っ引きならない必然性が籠もっていて、読む者に痛切な感情を呼び起こします。劇の終わり、上品ですが不器量な妹に慰められる場面は、ロシアの小説家ゴーリキーを子供のように泣かせました。市井の一凡人に過ぎないワーニャ叔父さんの真率な姿が鮮やかに浮かび上がる不思議な喜劇です。