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エッセイ 日本人の倫理と権力<私見>

武士は、二君に仕えずとは、頼朝の作った武士の倫理だった。それでは、その前はどうだったかというと、平安期の武士たちは宮廷や荘園や寺社などを自由に雇われ歩いていたのである。


では、貴族はどうだったかというと、菅原道真が左遷されたときなど、その配下の者たちもすべて零落していき、清少納言も定子が権力争いに負ければ、同様に運命をともにして落ちぶれていった。


つまり、二君に仕えずとは日本の貴族の倫理に他ならなかった。そして、武士が政権を我がものとしたとき、その政権を担当するにふさわしい者として、二君に仕えずという倫理を採用したのだ。


鎌倉期から、武士が担ってきたこの伝統は、武士の消滅とともに滅んだように見えるが。現代、この伝統を引き継いでいる上部の社会的階級はいない。江戸時代に、新しく台頭してきた商人階級は、その身分制からも、そうした倫理的伝統を受け継がなかった。


こうした倫理は、本来、社会の上層部が受け持つはずの性質のものだが、不思議なことに、現代では、中間階層のサラリーマンに受け継がれた。そのために、大部分のサラリーマンは会社以外の生活の伝手を持たない不自由な倫理を押しつけられることになった。だから、現代の権力は、この中間階層に集中する仕組みになるはずである。


だが、残念なことに、この階層は自分の持っている権力を、まだ、充分に使いこなせていないし、自分がどれだけの権力を持っているかさえ、知らないようである。権力が潰れた磁石のように力を消し合っているからである。


これは、社会の構造として、健全なあり方だろうか。