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おすすめ本の紹介文やエッセイ、絵、人物画、現代詩などを載せていきたいと思っています。

「女坂」円地文子 新潮文庫

女流作家円地文子の名篇です。円地には源氏物語の名訳がありますが、長年、この物語に私淑した円地ならではの目が光っています。物語は、亭主から自分好みの若い妾を探して連れて来いと命じられる妻の話です。主人公の倫はこの夫の理不尽な要求に昔ながらの女として耐えてみせます。長年の心労の末、倫は足に病いを得て伏せります。途端に妻を心配しだした夫に、死の間際の倫は「私が死んだら、亡骸を冷たい海にザンブリと捨ててください」と告げます。円地の凄みのある冷眼を感じさせる場面です。円地は女の肌の感触を文章にすることのできた作家でした。